動労水戸ブログ
抗議声明
JR東日本は、2020年3月常磐線全線開通に向けて、2011年3月の福島第一原発事故以来不通となっていた富岡駅-浪江駅間の試運転を、12月17日から開始しました。
これまで私たち動労水戸は、福島第一原発事故による健康被害をはじめとした危険があり、未だに帰還困難区域でまともに人が生活できる環境ではないこと、何より会社の指示によって働く労働者の被ばくの恐れがあることから、全線開通に強く反対してきました。今回の富岡-浪江間の試運転は、放射能による被ばくの危険性を一層高め、放射性物質を大量に拡散するものであり、労働組合として到底認めることのできない暴挙であり、断固抗議するものです。
第1に、今回開通させようとしている区間の沿線である大熊町、双葉町は、2020年春の段階ではまだ人が住めない帰還困難区域です。それでもJR東日本が開通させる目的は、「住民に戻ってきてもらうきっかけとするため」(9/6動労水戸団体交渉)としています。
政府や東京電力は、一刻も早く原発事故から復興したような形を作り、「原発事故は終わったこと」にしようとしています。3年前に安倍首相は、「汚染水はアンダーコントロール」「福島に健康被害はない」として東京オリンピックを招致しました。だからこそオリンピックまでに常磐線を開通させることが、JR東日本の至上命題になっています。しかし現実には、福島第一原発事故の収束作業は進まず、福島県民200名を超える甲状腺がん患者の増加、汚染水問題、汚染土の問題など山積みです。こうした危険な状況のもとに住民を帰すことは、安全な列車を走らせることが使命である鉄道労働者として認めることはできません。
第2に、鉄道労働者として働く上で、放射線被ばくの不安と危険はぬぐえません。JR東日本は3年前からこの区間の復旧工事を行い、「必要な除染は完了した」としています。しかし除染をしたのは鉄道用地内だけであり、その除染後でも空間線量が毎時2㍃シーベルトを超える区間が2㎞も続きます。この区間の列車の乗務員には線量計を持たせて、年間被ばく線量が1㍉シーベルトを超えないようにすれば大丈夫としていますが、2㍃シーベルトを超える高線量の所には放射性物質が存在するということであり、乗客も乗務員も空気と一緒に放射性物質を体内に取り込み、内部被ばくの危険性があります。10月13日台風19号で、山林から大量の雨水と泥が流れ込んだにもかかわらず、試運転に際して測定もしていません。
またこの区間を走る列車にも放射性物質が付着する恐れがあり、車両のメンテナンスをする労働者にも内部被ばくの危険性があります。私たちはこのメンテナンス業務についても、車両の放射性物質の線量を測定することと、内部被ばくをさせないための防護対策を要求しています。車両のメンテナンスは、埃だらけの床下機器を直接扱い、圧縮空気で機器の埃を飛ばしたりします。通常の作業では、マスクをしていても鼻の中が真っ黒になります。この要求に対してJR東日本は、「高速で走るから車両に放射性物質は付着しない」「必要な除染をしているから防護対策はしない」「車両の測定はしない」と、メンテナンスを行う労働者の命を守ろうとはしていません。労働者の命と健康を軽んじることを、労働組合として絶対に許すことはできません。
第3には、福島第一原発の危険性が全くなくなっていないということです。現在も廃炉に向けた作業は進行していますが、その作業もまったく計画通りにいかず、「中期ロードマップ」の5回目の改定案が示されたばかりです。溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しは2021年からとしていますが、世界でもやったことのない危険な作業はこれから行われます。この作業の最大の問題は、放射性物質の拡散だと言われています。膨大な汚染水や汚染土の処理も決まっておらず、政府の「非常事態宣言」も解除されていません。こうした危険極まりない状況の原発のわずか2㎞にも満たないところに、列車を通すことなど暴挙としか言えません。
「安全は輸送業務の最大の使命である」がJR東日本の綱領です。住民や労働者を命の危険にさらし、これから何が起こるかもわからないところに鉄道を走らせる常磐線全線開通の試運転に、動労水戸は断固として抗議するものです。
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2019/12/25 Wed.
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富岡–浪江間の試運転に抗議します!
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