5月22日に発生したJR九州長崎線の事故に関する、東京新聞の記事です。
長崎線 特急あわや衝突 運転士と指令 誤解重なる
(東京新聞 5月24付)
JR長崎線の肥前竜王駅(佐賀県白石市)で、長崎線の上り特急「かもめ20号」が止まっていた待避線に、博多発の下り列車「かもめ19号」が進入し正面衝突しそうになったミスは、指令センター、運転士双方の誤解が重なって起きた。JR九州の説明からはシステムを過信していた側面も浮かぶ。発端となった異常音感知から約10分に何が起きたのか検証した。
●現在地点が不正確 モニターでは停止
22日午後0時10分ごろ、異常音を感知した19号は、肥前竜王駅手前の信号付近で停止した。当時の信号は青。車両の点検が始まった。
このためダイヤの乱れが生じ、19号と20号がすれ違う駅は予定が変わり、一駅博多寄りの肥前竜王へ。指令は、20号が駅の待避線に入るよう設定を変え、20号が先に入った。
これと前後し、19号は点検を終え、運転士は現在地を「鳥栖(佐賀県)から49㌔地点」と指令に報告した。根拠は、社内モニターに表示された数字。しかし、車輪の回転から距離を計算するため厳密ではなく、正しくは49.16㌔地点だった。この約160㍍の差で、指令は19号が、直前に停止した肥前竜王駅手前の信号に達するまで「余裕」があると誤解した。
指令側にも、誤解が増幅する要因があった。指令センターにも、19号は信号手前に止まっていると表示されていたからだ。運転席の位置は信号を数㍍過ぎていたが、車両全体は信号を過ぎておらず、信号を越えたと判定するセンサーまで数十㌢届いていなかった。
緊急停止後、信号は赤に変わっていた。指令は、19号を信号まで進ませ、そこでポイント(分岐点)を待避線から本線に切り替えるつもりで、運転再開を許可した。
徐々にスピードを上げていく19号。しかし、運転士の前方にすでに信号はない。本線を進むと誤解していた運転士は、待避線に約40メートル入った地点で慌ててブレーキをかけた。20号は93㍍まで迫っていた。自動列車停止装置が作動する地点は過ぎていたため、ブレーキが少し遅れれば、ぶつかる危険があった。
JR九州は「指令も運転士も社内の規定には従っていた」と釈明する。ただ、モニター表示のずれは社内で知られており、機器だけに頼って行動した印象は否めない。
JR九州は今後、マニュアルを改善。列車位置を報告する際は、線路外に100㍍刻みで設けられている標識を目で確認するよう改めるという。
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