君を忘れない

今から32年前の4月1日に、国鉄からJRへの移行がありました。日本国有鉄道から、株式会社へ。公共交通から、利潤第一の民間会社への移行でした。

利潤を生まない労働ではなく、金を儲けることを第一とする意識改革へ。労働への誇りと仲間との協同を土台とする労働組合は、改革の敵だとされました。

JRに入ってまじめに車掌や運転士、あるいは検修の仕事の責任を果たして来た青年たちに、外注化やライフサイクルが進められて来ました。そのあげくに「ジョブローテーション」で「10年ごとの振り分け」をするというのです。

32年前にも、国鉄に入って給料は安いけどまじめに働けば安泰だと思っていた青年たちに「新会社に残れるかどうか?」の振り分けが行われました。


  (国分勝之撮影)


国鉄分割民営化・新会社移行の前年9月に、水戸機関区(現水戸運輸区の前身)の27才の青年高野弘樹さんが、千波の独身寮から飛び降り自殺しました。国労の組合員でした。

高野さんの遺書には、国鉄分割民営化への抗議と「このままでは中曽根(当時の首相)の思うがままだ。」という失望がにじんでいました。

彼は自殺する前日、動労水戸組合員が隔離されていた「水戸駅北口駐車場(丸井跡地)」を訪ねて来ました。きっと水戸機関区の同僚だった動労水戸組合員に、最後のお別れに来たのだと思います。

その日のこと。翌日の自殺の衝撃をいまだに忘れることはありません。

会社(旧国鉄)は、新会社移行で悩んでいたのではなく「借金問題があった」と彼の死の抗議を低めました。

彼が生きていたことを忘れない。彼の死を無駄にしない。動労水戸は、その2ヶ月後の11月に全員青年部で結成したのです。


  (君を忘れない。動労水戸の組合事務所には高野弘樹さんの遺影が今も飾られています。)

高野弘樹さんの実家は、南相馬だったはずです。震災と原発事故でどうなってしまったことでしょう。後を追うことも困難ですが、彼は彼を知る動労水戸組合員の中に生きています。

動労水戸の組合員が、簡単に折れないのは仲間と生きて来たことを大切にして、理不尽に奪われた命を胸に今を生きているからです。

人間はいずれ死にます。限りある命をどう生きるか。自分が生きていて、一番うれしいことは何か?信頼できる仲間がいること。仲間と心が触れ会い、熱い思いが込み上げる瞬間があること。

労働組合が違っても、高野弘樹さんを一人にしてしまったことを悔み、2度とそうしないことを誓って動労水戸の歴史を積み上げて来ました。

そのことが今ほど問われている時は無いと考えています。理不尽なことと闘うのは、仲間を守り一緒に生きるためです。その原点に帰ろう!

https://m.youtube.com/watch?v=Sme1ilzs4dA

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プロフィール

HN:
動労水戸
性別:
非公開
職業:
鉄道労働者
自己紹介:
【国鉄水戸動力車労働組合】
1986年結成。JR東日本・JR貨物とその関連会社の労働者で組織する労働組合です。

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