ダウンロード 乗務員勤務制度改正案カラクリ見破り絶対反対で闘おうJR東日本は5月17日、乗務員勤務制度改正(案)を各組合に提案するとともに、直ちに関係する社員全員を対象に職場で説明会を実施した。
この改正案のポイントは、育児・介護を必要とする乗務員が働きやすくするために、これまでの日中6時間の時短行路に加えて、朝夕の時間帯に短時間の行路をつくり、自分の希望の時間帯の行路を選択できるようにするというもの。
またこれとは別に「多様な働き方を実現する」ために、①現場の指導員等 ②支社勤務の者 ③当務主務(主務職で当直業務を行う者)など、列車に乗務することを専門に行う運転士・車掌以外の者が、自分の業務の時間の一部を使って、短時間の行路を乗務できるようにするという。しかし、これには大きな問題がある。
専門職としての乗務員をなくすパートタイマー化のはじまり
問題点の1は、これまでの熟練を要する専門職としての運転士・車掌という業務をぶつ切りにして「乗務員のパートタイマー化」する攻撃の始まりだ。
改正案では本人希望で短時間行路のみで帰宅する場合、残りの時間は賃金カットするという。まさしく働いた分だけしか金を払わないパートタイマーだ。こうした働き方を育児介護制度を悪用して導入するつもりなのだ。
この延長線上には短時間行路しか乗れない乗務員を安く雇って、これまで聖域と思われてきた乗務員の地位や労働条件をガタガタにするつもりなのだ。
「短時間行路」の設定は混乱を生むだけ
問題点の2は、短時間行路を現場ごとに何本設定するかは、育児介護の対象者、指導員の数、当務主務や支社勤務者がいるかどうかなどで決める(6月29日団交)としているが、いったん設定されるとその行路を毎日誰かが乗務しなければならないことになる。
育児介護の行路が乗る人がいない時は予備乗務員が乗ることになり、指導員用の行路や支社勤務者用の行路も同様に対象者が乗らない時は予備乗務員が乗ることになる。
要員が逼迫することは目に見えている。
乗務員の仕事をなめるな
問題点の3は、そもそも、運転士・車掌としてもっぱら乗務する以外の者が、1週間に数回決まった区間の短時間行路しか乗務しないで、それ以外の乗務員と同じレベルの安全・確実な業務ができるかという問題である。
乗務員の仕事を(指導員の仕事も)なめているとしか言いようがない。
育児介護とひきかえに極限的な労働強化を認めろという攻撃
そして最大の問題は、この制度改正の本当の狙いは、育児介護以外の乗務員の乗務行路をこれまでと比較にならないほど過重なものすることだ。
改正案では「効率性のさらなる追求」という項目で言われているが「各行路の労働時間Aと1日あたりの労働時間数(7時間10分)との乖離を縮小し…」というのは、単純に行路を大型化して「もっとたくさん乗ってもらう」ということを意味している。稠密線区で拘束時間の限度を日勤行路1時間、泊行路2時間を拡大するのはそのためだ。
思い出してほしい。昨年来社長が「乗務効率を上げる」とさんざん豪語していたことを。ではどうやって乗務効率を上げるのかの答えが、今制度の育児介護の「働きやすさ」とひきかえに育児介護以外の乗務員は「お互い様の精神」(提案資料)で、現在労働時間Aが6時間20分~6時間30分(本社説明)のところを7時間10分に近づけるということを新しい制度の趣旨として貫徹するということなのだ。育児介護の「働きやすさ」とひきかえに認めろということだ。
私たちは過去にも似たような苦い経験がある。エルダーとなる先輩たちの職場を確保するために、構内・検修業務や駅業務をほかの会社に委託すること(外注化)が必要だと。
しかし、実際はエルダーの職場の確保は口実で、主要な目的は業務の外注化にこそあった。外注化された職場はとてつもなく低賃金の労働者におきかえられ、劣悪な労働条件でやめてしまうプロパーも続出している。
このときは「高齢者雇用」とひきかえに外注化を認めろという攻撃だった。今回は「育児介護」とひきかえに専門職としての乗務員の仕事のあり方をぶち壊し、一方で極限的な労働強化を認めろという攻撃だ。二度とだまされてはいけない。このカラクリを見破って、乗務員勤務制度改正に絶対反対を明確にしよう。
さらに、この攻撃が今年2月から始まった東労組解体の動きと軌を一にして行われていることだ。
これまでの「ライフサイクル」や「外注化」のように、東労組の組織的な延命と取引して妥協点を見出してきたやり方はもはや通用しない。
逆に東労組が職場の不満や怒りを抑えてきたことも今はできない状態だ。会社が組合提案と同時に関係社員全員を対象に説明会を行ったのも実はこうした不満や怒りをあらかじめ封じるためだ。会社の側も自信などないのだ。
職場の怒りの声を結集させれば、特急車掌一人乗務を粉砕したように、改正案は必ず粉砕できる。今こそすべての労働者は団結しよう。