30年史『燎原の火のごとく』書評②

冤罪事件の当該として無実を訴え闘っている福嶋昌男さん(府中刑務所収監中)から、『燎原の火のごとく』への書評を寄せていただきました。紹介いたします。



『燎原の火の如く』巨大資本JRに勝利した動労水戸30―(動労水戸発行 201611月刊、以後本書という)を読み終えて、熱い感動に包まれました。

労働者・組合員の主体的闘いが満ちあふれています。日々の労働・協働の中で、国家権力・国鉄・JRとの闘いの中で、団結が育まれているのが伝わってきました。この団結力がJRを追い詰めています。日々の闘いの団結力と総括から会得できる熱き牽引の言葉・文脈が頁、頁に出てきて内奥から突き動かされます。本書はリーダーシップの書・革命の書です。まさに本書は実践的な「労働の奪還」論を生み出したのです。

本書を手にして、見開き・巻頭の写真と「巨大資本JRに闘いを挑む」から次々と見て、本当にまぶしかった。「全員
20代で新組合を結成!」、創刊号のビラ「やったぞ〝動労水戸〟結成」は記念碑です。動力車のヘルメット三里塚闘争へ!、動労水戸ストライキ、旗幟の数々、そばうどんの「のれん」、JRは最高裁判決を守れ!の横断幕と隊列、被曝労働拒否!、世界に羽ばたく団結のハチマキ、力強い笑顔のフィルム、ガッツの腕そして国際連帯、巻末の写真は仲間・団結・新たな闘いへ!です。



この巻頭の数々の写真とアピール・スローガンに動労水戸の
30年の団結とその力が発せられています。



動労青年部の
40人近くは国家権力国鉄・JRとその手先反革命カクマルとの闘いに勝利して、1986年1119日、動労水戸を結成します(本書は「革マル」と書いています。以後「革マル」とします)。青年達は動労千葉、三里塚闘争と共闘・連帯し、党と労働組合の一体的建設のもとに当局・革マルに勝ち抜いたのです。青年達は情勢と時代認識をしっかり主体化・方針化し、職場・現場での闘いを絶対反対で貫徹し、党と労働組合の一体的建設に勝利したのです。この動労水戸の勝利の過程と地平が本書に熱く展開されています。本書は見開きの写真・スローガンと団結、石井真一執行委員長の序文、第一部団結-鉄輪旗のもとに、第二部動労水戸30年の闘いの軌跡、第三部連帯メッセージ、第四部資料の、大きく5つの構成からなっています。



序文は、動労水戸の
30年の大きな節目・飛躍を動労水戸の結成-最高裁勝利とJRへの運転士復帰、被曝労働拒否!の闘いを打ち立てたこと、と発しています。30年の闘いは「労働の奪還」論を生み出しました。



この大きな勝利が、第一部で動労水戸の執行部及び青年組合員が座談会を通して、生活・仕事・職場闘争で明るく-確信をもって話し合っています。そして組合書記の方々の勝利の糧に、家族の、支援の方々の闘いがあることをアピールしています。



執行委員の方々は、
30年の闘いの基軸・土台に「動労千葉や三里塚の闘いが原点にあった」、運転士に復帰して「そこからハンドルを取り戻していく過程です」それは「自分の命も大事だし、乗客の命のことも考えて運転しているわけ」です。動労千葉の運転保安闘争=安全問題と格闘して「一人のために全員が団結するというね」の気風を打ち立てています。



青年組合員は2011年3・
11東日本大震災・福島第一原発の大爆発を見据えた動労水戸の闘いに根底から共感しています。動労水戸に組合員として結集し、被曝労働拒否を闘います。「最初は中野洋さんの『甦る労働組合』を勉強したんですよ」、「一人の決起が職場を変える」、この力強い青年の決起が今、全ての職場のスローガンになっています。さらに組合員は語ります。「動労水戸はたとえどんな理由があろうとも仲間を守ってきました」、「情に厚く、限りなく明るく徹底的に闘う労働組合」であり、労働者間で「団結し闘うことのなかにすばらしい未来がある」そして労働者の未来は「しっかり議論すること、労働者を信頼し、団結をつくりだすことを最大の総括軸にして闘っていくこと」なのです。まさに「『絶対反対』で押し渡るなかからまったく新しい労働者の価値観と生き方を生みだしてきたのだと思います」と熱く語ります。



新しい労働者の価値観は家族の「奥さんたちの苦労、忍耐があっての動労水戸です」、「家族の『寛容と愛』に支えられ」動労水戸のそして全労働者の団結が生活からもつくられているのです。



第二部は、辻川慎一執行副委員長が第一部を受けて〝動労水戸
30年の闘いの軌跡〟の中からいかに「労働の奪還」論が生みだされてきたかを具体的・歴史的闘いの事実をもってアピールしています。「団結した労働者階級の闘いのなかにこそ、時代と歴史の真実があるということをつかみとってきた」、「マルクス主義の核心を『労働の奪還』論としてとらえ返した」、「『労働は資本のものでなく、社会的共同性のためにある』という労働の奪還論をすえて闘い抜いた」のです。この「労働の奪還」論に立つとき、三河島事故、鶴見事故、尼崎事故などの「安全問題の爆発は、資本主義を根本的に批判するものであった」ととらえ返すことができます。「安全の確立という問題は、労働者の抵抗や労働組合の闘いがあってはじめて、資本にそれを強制することができる」のです。まさに、闘ってはじめて見えてくる方針であり、運動・闘いです。動労千葉・動労水戸・動労総連合の国家権力・国鉄・JR・革マルとの闘い-国鉄分割・民営化反対闘争は「労働と労働組合の存在を根本から問い直す、歴史的試練の過程であったのです。ここにこそまた、「労働の奪還」論を生みだした現実的・職場の闘いがあります。



労働とは何か。「労働こそ、人間の生命活動の基本なのだ。人間は自然に働きかけ、自然を変革すると同時に人間自身をも変革する」なおかつ労働は協働・共同(体)であり、共同社会の基軸・土台です。



獄中
42年の星野文昭さんは、動労千葉、動労水戸の闘いが「労働の奪還」論を打ち出したこと、星野闘争はこの階級的労働運動と一つになって勝利できることをアピールしています。



動労千葉の田中康宏委員長は〝困難に立ち向かいみごとに団結を守り抜いた〟と強い賛辞を送っています。動労千葉・動労水戸・動労総連合・全国の労働組合の団結は日本の、韓国の全世界の労働者階級の闘いを牽引するものです。



私が、ここ府中刑務所に下獄以来、「日刊動労千葉」「動労西日本」が毎号欠かさず送られてきます。労働者は誇りをもって労働し、闘っているのが熱く伝わってきます。動労西日本山田和広書記長をはじめ、解雇撤回闘争、安全問題の闘いが展開されています。



支部執行委員に車両技術係の方がおられます。私は『鉄道技術の日本史』
(小島英俊 中公新書)、官本で写真集『D51蒸気機関車』、防災の『鉄路の闘い』を読みました。郡山工場はD51の製造工場でした。開成山公園にD51がありますね。



6年目の3・
11反原発福島行動17は世界史的集会です。巻頭の写真に「ドイツ機関士労組の仲間と」(2016・9・10)があります。動労水戸のドイツ訪問に同行した、動労福島の倉岡雅美さんが『序局』14号で、ドイツ機関士労組のクルト・シュナイダーさん、ゴアレーベン核廃棄物処理場建設反対のケアスティン・ルーデックさんとの情熱と魂が通い合った国際連帯をレポートしています。シュナイダーさんは11月集会の団結をドイツに、ルーデックさんは福島原発の爆発を見据えて、「福島は核と原発をなくす要」といって連帯しています。反原発3・11郡山集会は「ふくしま共同診療所」と共同して、チェルノブイリの闘いを受けて羽ばたいています。



被曝労働拒否! 常磐線開通阻止! 帰還強制を許すな!

30年史『燎原の火のごとく』書評①

合同・一般労働組合全国協議会の小泉義秀事務局長より、弊組合30年史『燎原の火のごとく』への書評をお寄せいただきましたので紹介させていただきます。


【1】
最初の8頁はグラビアだ。30年史のハイライト部分を選び出した珠玉の写真である。320頁の、読み応えがある著作だ。私は朝早起きして3時間、電車の中で2時間、喫茶店で3時間かけて1日で読了した。一気に読んでしまいたくなるワクワクドキドキの中身だからだ。

本書はどこから読み進めても良いと思う。私は最初に石井委員長の巻頭言の2~5頁を読み、それから第2部「動労水戸30年 闘いの軌跡」(動労水戸執行副委員長 辻川慎一)105~217頁に進み、第1部「団結―鉄輪旗のもとに」、第3部、第4部と読了した。


【2】
石井委員長は「あれから30年が経過しました。いま考えてみると、労働運動史上画期的な出来事でした」と述べている。軌跡は奇跡の30年だ。「動労水戸が1986年11月に結成されてから、敵階級の憎悪に満ちた攻撃は熾烈を極めました。労働者から労働を奪い、鉄道現場から引きはがし、採算を度外視して役員活動家だけでなく、一般の組合員まで売店やそば屋や自動販売機を管理するベンデイングセンターに隔離しました。その攻撃はじつに22年問続けられました」と書かれている。

辻川さんの第2部全体、執行部座談会を通して読み進む中で、もし私がその現場、その瞬間にそこにいたとしたら、きちんと闘えただろうか、耐え抜くことができただろうかと考えるとやはり信じがたい思いの方が先に立つ。

石井委員長の巻頭言はその闘いの歴史に勝利して、新たな段階に立ち向かう動労水戸の勝利感、自負心、誇りを高らかに宣言し、次なる闘いへの決意を凝縮したものとなっている。


【3】
第1部の座談会はその30年間の闘いの歴史を8名の執行委員が語っている。8名の強者の強烈な個性を若い西納書記がうまく引き出す構成となっているのが素晴らしい。もっとこの話を聞いていたいなと思う直前で終わってしまう余韻を残す企画だ。
照沼君が初めて11月集会に参加して辻川さんの隣に座っている写真が60頁に掲載されている。こういう写真があるんだと感動させられた。

座談会の2は石井委員長が兄貴分の立場で青年の動労水戸に加入してくる経緯などが鮮明にわかる内容となっていて凄い。彼らは特別な存在ではなく、東労組の中にいる青年も同様に考えているに違いない。青年座談会は東労組の青年が堤防決壊的に動労水戸に結集してくることを予感させる企画だ。

このような青年労働者が動労水戸に結集してきていることが動労水戸の30年の歴史の最大の勝利であり、それは新たな段階の始まりに過ぎないんだということを感じさせてくれる。
青年同士だけでなく、石井委員長を入れて対談していることにより、動労水戸が青年とどういう会話をして、共に闘い抜いているのかよくわかる。


【4】
第2部は線を引いて舐めるように読んだ。労働組合運動、革命に向かう様々な内容が詰まっている。「はじめに」は曾澤君の強制配転阻止の『労働の奪還』の闘いの記述に始まり、「動労水戸とともに歴史を歩みはじめた次世代の青年たちへの限りない信頼と連帯の訴えである」(110頁)で終わる。本書の核心部分がここにある。動労革マルとの闘いの最前線に動労水戸が立ち一歩も引かないで切り開いてきた壮絶としか言いようのない凄まじい歴史が述べられている。

中でも圧巻は「第7章 結成30周年のすべてをかけて全国・全世界をとらえる挑戦へ」である。「(1)終焉の時を迎える資本主義」「(2)労働の奪還」「(3)青年の階級のリーダーを生み出す」という構成になっているが、この章の「労働とは何か」「協同と共同性」はとても分かりやすい。この内容の高さと分かりやすさの両方が青年を獲得する要なのだと思う。 


【5】
本書全体を通して最初から感じたことは、誰か特定の組合員に焦点を当てるのではなく、動労水戸の組合員全員が主人公になっている構成だ。それが素晴らしい。

これは本の構成でそうなったのではなく、現実の動労水戸の歴史がそういうものなのだ。更に動労水戸の家族、動労水戸の30年の歴史に関わったすべての人に光が当てられている。


【6】
オチとエポックは「小編集後記」(104頁)であろう。この頁は決して読み飛ばしてはならない。「うちは、誰か必ず家に泊まっているという新婚生活から始まり、37年になりました。今度結婚する時は、お酒が飲めない人がいいです」(辻川あつ子)


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『燎原の火のごとく』

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プロフィール

HN:
動労水戸
性別:
非公開
職業:
鉄道労働者
自己紹介:
【国鉄水戸動力車労働組合】
1986年結成。JR東日本・JR貨物とその関連会社の労働者で組織する労働組合です。

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